料理のレシピにも「お塩少々」とか、よく出てくるこの表現。「少々」とか「ちょっと」って実際どのくらいなの?と思うことは、私自身にもよくある。ごはんをよそおってもらうときに「ごはんどれくらい?」と聞かれて、冗談ぽく「456粒」と答えたりする。「適当でいい」と思いながら、その「適当」がどれくらなのかが、正直なところわからない。

 小学校4、5年くらいの頃、職員室で「ちくわ事件」が起きた。「◯◯くん、ちょっと“ちくわ”食べん?」と差し出されたのが、ひと切れとかじゃなく、輪切りになって皿に乗った1本分のちくわだった。とたんに頭の中がぐるぐる回りだした。それはおそらく「いただきます」と言って、その中のひと切れだけをつまんで食べる場面だったのだろう。でも差し出されたのが1本分だったので、手が止まってしまった。当時の私はこういうとき、言葉が出なかった。喋ろうとすると吃音(きつおん)、つまり“どもって”いたから。その場でしばらく立ちすくんで、いきなり駆け出して職員室はおろか、黙ったまま学校を飛び出して夜になるまで家にも帰らなかった。

 当時は私自身にも、先生にも何が起きたのか分からずじまいで、時折「ちくわ事件」として、話の種になることがあった。

 きっとあのとき、今のように喋れたら「“ちょっと”ってどれくらいですか?」と聞いていたんだろう。

投稿者 Miyuu

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