
ふと見上げた空に、雲の切れ間があったんです。それも、スパッとナイフで切れ目を入れたかのような。
その切れ目を眺めていると、その切れ目に沿って飛ぶ飛行機がありました。飛んだあとには、ひこうき雲が伸びています。
目で追いかけていると、ずっと、その切れ目に沿って飛んでいるわけです。これだけなら、偶然そんなこともあるのかな(雲の切れ目の説明はできませんが)くらいに思うんですが、そのわずか数分後の空を見ると、もともとあった切れ目も、その後できたひこうき雲も消えているんです。
まるで、何もなかったかのように、雲が広がっているんです。
ぼくはいったい何を見たんでしょうか。あれは、ごく普通の飛行機だったし、ひこうき雲でした。そのひこうき雲も消えてしまい、切れ目も残らないってどういうことなんだろう。
雲の切れ間の正体は「消滅飛行機雲」と呼ぶそうです。ぼくが見た飛行機の前に一機の飛行機が飛んだ時、エンジンの熱で雲が切り裂かれたように消えることがあるそうです。そして、たまたまその数分後に、同じルートを別の飛行機が飛んで、ひこうき雲がその空間を埋めて、にじんで見分けがつかなくなった。
そういうことなのかな、とわかったつもりではいても、不思議なことには変わりはありません。そして、それを見かけることがあるとしても、すぐに消えたように見えるので、気がつかないのでしょう。見えたことが奇跡なんですね。
奇跡に感謝します。ここまで読んでくれた方に、ありがとう。